お部屋にあかい灯がつくと、
硝子のそとの、もくせいの、
しげみのなかにも灯がつくの、
ここのとおんなじ灯がつくの。
夜更けてみんながねねしたら、
葉つぱはあの灯をなかにして、
みんなで笑つて話すのよ、
みんなでお唄もうたふのよ。
ちやうど、かうしてわたしらが、
ごはんのあとでするやうに。
窓かけしめよ、やすみましよ、
みんなが起きてゐるうちは、
葉つぱはお話できぬから。
(もくせいの灯:金子みすゞ)
『金子みすゞ全集』
(JULA出版局)より
もくせいも人間の営みと同じ生活をしているなんて、
誰が考えるでしょうか?
笑って話したり、唄をうたったり……。
みすゞさんの想像のアンテナは
こんなところにまでのびているんですね。
鈴木 澪
幻想的な詩で、私のもっとも好きな詩の一つです。
宿を出て窓に灯がうつると、
ふとこの詩を口ずさんでいます。
葉っぱと心を通わせるみすゞさんの思いに
ひたってうれしくなります。
曲もそんな想いいっぱいに作れたかなァと思っています。
大西 進