このページでは金子みすゞさんの

本日の詩をご紹介しています。

 

「きょうのみすゞさんの詩は・・・」

 

「月と泥棒」です。

 

十三人の泥棒が、

 

北の山から降りて來た

 

町を荒らしてやらうとて、

 

黒い行列つゥくつた。

 

 

たつた一人のお月さま、

 

東の山からあァがつた。

 

町を飾つてやらうとて、

 

銀のヴェールを投げかけた。

 

 

黒い行列ァ銀になる、

 

銀の行列ァぞろぞろと、

 

銀のまちなかゆきぬける。

 

 

十三人の泥棒は、

 

お山のみちも忘れたし、

 

泥棒(どろぼ)のみちも忘れたし、

 

 

南のはてで、氣がつけば、

 

山はしらじら、どこやらで、

 

コケッコの、バカッコと鶏がなく。

 

 

(月と泥棒:金子みすゞ)

 

『金子みすゞ全集』

(JULA出版局)より

 

 

何かとても愉快な詩です。

 

みすゞさんはユーモアのある

 

女性だったのだと改めて感じます。

 

月の光にかかっては悪い心も、

 

いつの間にか善い心に導かれてしまいます。

 

最後の行がおかしいですよね。

 

鈴木 澪