このページでは金子みすゞさんの

本日の詩をご紹介しています。

 

「きょうのみすゞさんの詩は・・・」

 

「帆」です。

  

ちよいと

 

渚の貝がら見た間に、

 

あの帆はどつかへ

 

行つてしまつた。

 

こんなふうに

 

行つてしまつた、

 

誰かがあつた──

 

何かがあつた──

 

(帆:金子みすゞ)

 

『金子みすゞ全集』

(JULA出版局)より

 

 

舟は一見停まって見えたりしますが、

 

やはり動いているものですから

 

他の物に気をうばわれている間には

 

視界から消えてしまっていることがあります。

 

そして、それと同じようなことが

 

日常生活の中にもあるのです。

 

鈴木 澪

 

 

「誰かがあった」は

 

「誰かが居た」です。

 

こんな風に行ってしまったのは、

 

「父のことか」と思う。

 

「海の向こうに消えた父のことだと」

 

その父の身の

 

上に何かがあった。

 

大西 進