このページでは金子みすゞさんの

本日の詩をご紹介しています。

 

「きょうのみすゞさんの詩は・・・」

 

「魚売りの小母さんに」です。

  

魚賣りさん、

 

あつち向いてね、

 

いま、あたし、

 

花を挿すのよ、

 

さくらの花を。

 

だつて小母さん、あなたの髪にや、

 

花かんざしも

 

星のよなピンも、

 

なんにもないもの、さびしいもの。

 

ほうら、小母さん、

 

あなたの髪に、

 

あのお芝居のお姫さまの、

 

かんざしよりかきれいな花が、

 

山のさくらが咲きました。

 

魚賣りさん、

 

こつち向いてね、

 

いま、あたし、

 

花を挿したの、

 

さくらの花を。

 

 

(魚賣りの小母さんに:金子みすゞ) 

 

『金子みすゞ全集』

(JULA出版局)より

 

 

みすヾさんの心は空に輝く星のよう、

 

きれいが好きな女の子の心境を、

 

この詩はよく表わしています。

 

花がかんざしになって美しくかわる様子が

 

言葉のはしはしに出ていて、

 

読む側の気持ちまでが嬉しくなってきます。

 

みすヾさんは毎日をそれはそれは

 

夢心地で過ごしていたのでしょう。

 

愛あふれる作品だと思います。

 

鈴木 澪

 

 

どこかの角からおばさんを見て思った、

 

心の中の映像ではないかと思っています。

 

こっちを向いてねと一方向をじっとみつめて

 

魚を売っているおばさんに、

 

売れるといいのに客はこない。

 

だったら花かざりして目立つようにすれ

 

ば魚が売れるかな、売れたらうれしいな

 

という気持でみているみすヾさんの心の絵。

 

(「花をさしたの」のことばがそう思わせます)

 

大西 進